美味い日本酒を呑むと、そのDetailsを知りたくなるのが人情というものです。
日本酒には胴貼り(表の大きいラベル)や裏貼り(裏ラベル)に、その酒の特徴を表す記述がなされていることが少なくありません。ラベルから読み取れる情報を「読んで」、より深く日本酒を理解したいものです。
ラベル記載項目のポイント解説は↓
1) 特定名称(Designation)→純米大吟醸、純米吟醸、大吟醸、吟醸、純米、本醸造等の区別。目立つところに記載してある。
2) 原材料(Raw ingredients)
(
a) 原料米(Rice variety used)→使用割合が50%を超えた米の品種が記載。全量同じ米の場合は100%の表示。麹米と掛米を別々に表示してある場合もある。
麹米/ 麹造りに使用した原料米
掛米/ 蒸して酒母、醪に掛ける(加える)米。醪を造るときに、酒母、麹、水と一緒に加えた原料米。
(
b) 米麹(Koji)→酒造りに使われる米全体の約20%を蒸して、黄麹菌(カビの一種)を米の内部まで深く繁殖させたもの。麹菌がつくった酵素(アミラーゼ Amylaseやプロテアーゼ Protease)の働きで蒸米のデンプンが分解されブドウ糖に変わる。
Amylase/ グルコシド結合分解酵素
Protease/ タンパク質分解酵素
(
c) 醸造アルコール(Jozo-alcohol)→デンプン質や糖を含むサトウキビなどの穀物を発酵させた後に蒸留して造られる95%エタノール。
3) 水(Water)→仕込みに使った水
4) 精米歩合(Rice polishing ratio, Degree of polishing)→精米後に残った白米の割合。百分率(%)表記。(白米重量)/(玄米の重量)×100。
cf.日本酒の分類により精米歩合(Rice polishing ratio)はこんなふうになります↓
Designation Rice Polishing Ratio / %
Dai-Ginjyo (大吟醸) up to 50
Ginjyo (吟醸) up to 60
Junmai/Honjyozo (純米/本醸造) up to 70
Futsu/Normal (普通酒) 73-75
5) 酒母(Shubo)→「酛」。水、麹、蒸米を混ぜたところに酵母を加えて培養したもの。生酛、山廃酛、速醸酛、高温糖化酛などがある。
6) 酵母(Yeast)→酒母を造るときに加えた酵母の種類が記載。「酵母」は糖からアルコールをつくるサッカロマイセス・セレビシエとその仲間の菌類の総称。分類上は700種類以上ありアルコール発酵に無縁のものが多い。頭文字に「K」とある場合は協会酵母を示す。
協会酵母/
財団法人日本醸造協会が領布している酵母。
家付き酵母/ 酒蔵に棲みついている酵母。
cf.主な協会酵母の種類
Varieties Roots & Characteristics
協会 6号
新政酒造から分離。
発酵力が強く、香りはやや低くまろやか。淡麗な酒質に最適。
協会 7号
宮坂醸造から分離。
梅のような清楚な香り。
華やかな香りで広く吟醸用・普通醸造用に適す。
協会 9号 熊本県酒造研究所から分離。別名「熊本酵母」。
上立ち香は高いが、含み香は低い。
短期もろみで華やかな香りと吟醸香が高い。
協会10号
明利酒類から分離。別名「小川酵母」。
酸が少なく、高い吟醸香。
低温長期もろみで酸が少なく吟醸香が高い。
協会11号 醸造試験場で育種。7号酵母のアルコール耐性株。
酸が強く、アルコール度が高い。
もろみが長期になっても切れが良く、アミノ酸が少ない。
協会14号 金沢局鑑定官室で育種。別名「金沢酵母」。
酸が少なくバランスの良い穏やかな香り。
低温中期型もろみの経過をとり特定名称清酒に適す。
7) アルコール分(Percentage of Alcohol, Alcohol content)→アルコール濃度(vol/vol)。アルコール度。
8) 日本酒度(Sake meter value)→日本酒の糖分の多寡を表す尺度。比重(Specific gravity)を基に算出。一般的に+5以上は辛口。-5以下は甘口。日本酒メーターという比重計(浮き)で測定。日本酒中のエキス分(主に糖分)が多いと比重が大きくなるため、浮きが持ち上がり数値は小さくなり(-方向)、逆にエキス分が少なくなると、浮きは沈み数値は大きくなる(+方向)。日本酒のエキス分は主に糖分なので、日本酒度が小さいほど糖分が多い=甘口の酒であろうということになる。但し、日本酒の味は糖分だけで決まるのではなく、酸度やアルコール分、飲むときの温度などにも大きく左右されるので、日本酒度は甘辛の絶対的使用ではない。また、にごり酒は「にごり」の成分が混じっているために比重が大きくなり、たいがい日本酒度は-10~-30程度。
計算式は
Sake meter value=[(1/specific gravity)-1]×1443
9) 酸度(Acidity, Acid degree)→乳酸(lactic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)など含有する有機酸(organic acid)の総量。10ml中に含有する酸を中和するのに必要な0.1N NaOH水溶液の容量(pH 7,2まで滴定する)。普通の日本酒の酸度は、だいたい1.0~2.0の範囲。酸の量が多くなると、酸味が増すだけでなく、味が濃く感じられたり、辛口に感じられたりする。逆に酸の量が少なくなると、味が薄く感じられるようになる。
10) アミノ酸度(Level of amino acids, Amino acid degree)→アミノ酸(amino acid)の量を示す指標。味の濃淡をみる目安となる。数値が低ければ淡麗タイプ、高いと濃醇系。 10ml中に含有するアミノ酸を中和するのに必要な0.1N NaOH水溶液の容量。pH 8.2まで中和する。日本酒にはアルギニン(Arginine )、チロシン(Tyrosine)、セリン(Serine)、ロイシン(Leucine )、グルタミン酸(Glutamic acid )など約20種類のアミノ酸が含まれてる。
11) 杜氏(Toji)→造りの最高責任者の個人名。流派や出身地が併記される場合もある。
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